僕がカミングアウトをするのは「ヒトデを投げるため」―ジャン的カミングアウトの捉え方と訓練所入所前の心境
2016/10/03
こんにちは、ジャンです。青年海外協力隊の派遣前訓練が来週から始まります。初の本部公認のトランスジェンダー隊員、と言うことで派遣されることになった僕の今の心境を綴りたいと思います。なにが僕にこの面倒な道のりを歩ませたのでしょうか?
長い長い半年
なぜまだ日本にいるんだろう…
この半年は僕にとっては本当に長い時間でした。特に9月はバイトもほとんどなかったので、タイ語を勉強し、本を読み漁りました。何も咲かない日には下へ下へと値を伸ばさなければなりませんからね。
僕はもともとは平成28年度1次隊としてタイではない国に派遣される予定でした。しかし、僕が実はトランスジェンダーであることを訓練所の方に伝えたことによって、様々な配慮から僕は3次隊に変更、派遣先もタイとなりました。つまり、僕がカミングアウトさえしなければ、今頃は既に現地で働き始めて2か月以上経っているはずだったのです。
昨日のヒロトさんの記事の考え方とは近いようで少し違う考え方になるのかもしれませんが、僕はトランスジェンダーであることを特に隠してはいません。呼ばれれば大学や専門学校でのLGBTに関する授業に当事者として話をしに行きますし、当事者としておかしいと思うことがあれば、僕の顔を知るリアルな知り合いの前で当事者目線の意見を述べます(LGBTの問題に限らず政治や社会問題に関してもそうです)。Facebookにもそういう類のことを書きますし、必要があれば自分がトランスジェンダーであることも話します。ただ、確かに僕もこういうサイトで執筆していることは特に伝えてはいないですね。
LGBT情報発信サイトを運営している事を公言しない理由〜元女性・FTMと公言しない先輩から学んだ「LGBTは私の一部だが全てではない」事〜
今回あえてカミングアウトしたのは、僕の個人ブログに「性同一性障害 青年海外協力隊」という検索ワードでたどり着いたFTMの方にメッセージをもらったからです。「自分も行ってみたくて興味はあるが、性同一性障害である自分が受け入れてもらえるのかなど不安もある(その人は胸オペ済み)。そんな中でこのブログにたどり着いた。」と。
僕はその時点で女性として受験していますし、特にカミングアウトする気もありませんでした(ただ、のちに1次隊で一緒に行くはずだった隊員に「受験の時男か女かわからなかったのを覚えてる」と言われたので、女性の「フリ」をしているとそれなりにインパクトがあったようです。笑)。しかし、僕は曲がりなりにも合格した立場なのだからそれを理由に合格を取り消すことはできないだろうと踏んで、まずは通称名の使用だけ打診してみることにしました。それが結局カミングアウトつながってしまったんですね。
もちろん僕が本部の方には特に何も言わずに黙って女性として派遣され、他の隊員に個人的に話をすればよかったのかもしれません。しかし、前例がない現状のままでは同じことの繰り返しで、ずっと「前例がない」ままことが進んでいってしまいます。
僕はヒトデを投げ続ける
「星投げ人」というお話をご存知でしょうか?僕は確かこの話を高校生の頃英語の教材か何かで知りました。僕が大切にしている話の一つです。
『星投げ人』 ローレン・アイズリー
あるところに、年をとった男の人がいました。
その人は 毎朝 海岸を散歩していました。ある日、いつものように海岸に出かけると
少年が1人。
何かを拾っては、海に向かって投げています。「おはよう、何をしているんだね?」
少年は答えました。「ヒトデを海に投げてるんだ。
今は引き潮で、おまけに太陽がギラギラ照りつけているから、
海に戻してやらないと死んでしまうもの。」「でもね、君。ここは砂浜なんだよ。
何キロも続いているし、そこらじゅうヒトデだらけだ。
すべてのヒトデを助けることはできないよ。
だから、そんな事をしてもしょうがないだろう。」少年はじっと聞いていましたが、ふたたびヒトデをつかむと、
にっこりしながら、海に投げました。
「でも、今投げたヒトデにとっては意味があるでしょ。」
僕がトランスジェンダーであることをわざわざカミングアウトしたのは、ある意味滑稽なことだったのかもしれません。しかし僕はいつも、自分の手の届く場所にあるヒトデを助けたい一心で動いています。
年を取った男が言うように、すべてのヒトデを投げることはできません。でも、僕のアクションは協力隊の募集ページの文言を変えるきっかけになりました。そして僕に連絡をくれたFTMの方はこれを受けて、近々協力隊に挑戦してみようという気になっているそうです。
もちろんこの文言が入ったことに関して賛否両論あるでしょうし、否定的な解釈ができないわけではありません。今後僕以外にカミングアウトしてから合格を勝ち取れたLGBTの隊員が出るまでは何とも言えないような気はします。
ただ、僕の長い半年に全く意味がなかったわけではないような気がしてうれしかったです。そしてこの半年間「どんなに時間があっても学ぶのに時間が十分足りることはない」と痛感できたのも僕にとっては大きな収穫でした。
今はただとにかく、わくわく!
なんだかんだでようやく訓練所入所まで1週間を切りました。今はただただ楽しみで仕方ありません。どんな人と出会えるのか、どんなことを学べるのか。高校生の頃から思い描いていた「国際協力業界での仕事」への1歩目をようやく踏み出すことができそうです。
パイオニアも新メンバーが加入してさらにわくわく。僕もブルーハーツ大好きですが、新メンバーCocoさんもそうみたいです。期待の新星の情報はこちら!
待望のむさくるしくないメンバー加入です!今後はCocoさんのカナダ情報にご期待ください。