本当は埋没したい僕がトランスジェンダーであることを公表している理由
2017/03/04
こんにちは、ジャンです。今日は僕がトランスジェンダーであることを公表して人前に出る理由についてのお話です。人に女性扱いされることが苦痛でホルモン注射までしたFTMの僕が、なぜトランスジェンダーであることを隠さずに生活しているのでしょうか?
人前で話すのは?
僕が青年海外協力隊の訓練所で訓練を受けているとき、LGBTに関する自主講座をやりました。
思っていた以上に好評で、いい感想をいただくことができました。僕は今までにも専門学校、大学、また小学校の先生などに向けてLGBTに関するお話をさせてもらうことが何回かありました。しかし、ホルモン注射などもやった今は、本音を言えば公表せずに埋没して生活したいわけです。実際アルバイト先や職場で一部の人にしか言わずに働くこともありました。
実際、LGBTなんてメディアでも良く言葉を聞くようになっていて、僕なんかが人前で話さなくても当事者は自分で調べたり考えたりしているのかもしれません。かみ
それでも(必要があれば)人前に出たり、新聞やテレビの取材に応えるのは、たまに当事者の人に「話を聞けて良かった」とものすごく感謝してもらえることがあるからです。
誰かのモヤモヤを軽くできるなら
僕は今回訓練所でLGBTの概要を話す際にアセクシャル(無性愛)についても話をしました。アセクシャルは『他者に対して恒常的に恋愛感情や性的欲求を抱かない』ことです。
「そもそも人に対して恋愛感情を抱かない人もいます。飲み会なんかでも盛り上がるとついつい恋愛話になりますが、恋愛感情を抱かない人もいるんだってことを知っておいてほしいと思います」
おそらく、こういうことを言いました。僕はアセクシャルではないので、本当にさらっと触れただけでした。
そして後日、講座に参加してくれていた訓練生にとても晴れやかな顔でこう言われました。
「今まで私は人を好きになったことがなくて、自分はおかしいのかなって思ってたんだよね。だけど『そういう人もいるんだよ』って話を聞けて気分が軽くなったような気がした。本当にありがとう」
僕はそれを聞いてとても嬉しかったし、講座をやってよかったな、と思いました。同性愛者やトランスジェンダーほど認知されていないこともあってか、彼女の場合自分がいわゆるセクシャルマイノリティだなんて思ったことはなかったそうです。
また、以前大学で話した時も、僕の話を聞いた後に「もうどうにでもなれ!」と勢いでカミングアウトしたゲイの方もいました。すっきりした!と嬉しそうに報告してくれて、こちらも嬉しくなりました。
数打ちゃ当たる?
僕は非常に無力です。そしてLGBTであることを仕事にする気も今のところあまりないです。それでも自分の手が届く範囲にモヤモヤしてる人がいたら、少し心を軽くするくらいのことはできるかもしれません。僕が自分の体験や持っている知識を話すことで、誰かのモヤモヤがマシになるのならお安い御用です。
でも、人に言えずに一人で抱え込んでモヤモヤしている人はどこにいるのか分かりません。だから僕はいろんな人の前に出て、たくさんの人の中にたまたまいるその人に「そんなに抱え込まなくても大丈夫だよ」というメッセージを届けられるように数を打っていくわけですね。
僕自身にもモヤモヤはあります。解決していない問題も山積みです。それでも改めて人前で話したり取材を受けたり、また、こうやって記事を書いていると自分の中で整理されていくこともあります。結局人のためではなくて自分のためなのかもしれません。