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2018年2月25日完 パイオニアのご愛読ありがとうございました!

性別適合手術とクラウドファンディングの話―他人の金で手術をするのはアリなのか?

こんにちは、ジャンです。先月twitterでも話題になりましたが、クラウドファンディングサイトで性別適合手術の資金を募るプロジェクトがありました。人のお金を使って性別適合手術をするのは悪いことなのでしょうか?

同情するなら金をくれ?クラウドファンディングで性別適合手術の費用を募るということ

まずクラウドファンディングって?

そもそもクラウドファンディングとは?というお話からはじめますが、クラウドファンディングとはあるプログラムの達成のためにネット上で不特定多数の人々からお金を募ることを言います。ネット上での募金活動ということですね。

通常、製品開発や事業展開などのプロジェクトを達成するには、多くの資金が必要となる。そのため、良いアイデアや技術があっても、資金不足で目的を達成できないことがある。クラウドファンディングでは、インターネットを通じて、自分のプロジェクトを公開し、出資者から資金提供を受けることができるため、自己資金がなくても、プロジェクトの遂行が可能となる。

コトバンク クラウドファンディング より引用

つまり通常は何かやりたいことがあるけど自分のお金だけでは足りないから、それを達成するのに必要なお金を募るのがクラウドファンディングですね。

その中で今回クラウドファンディングを使って性別適合手術の費用を募るFTMの方が出てきたわけです。いつかはこんな人が出てくるだろうな。とは思っていましたが、本当に出てきてしまいました。

この文脈からご察しの通り、僕は彼のやっていることには賛同できません。でも「性別適合手術」という目的があるのであれば、彼を「かわいそう」と思った人からお金を集めて手術をするのはクラウドファンディングとして成立するから問題ないのでは?という方もいらっしゃると思うので、なぜ賛同できないかをまとめてみました。出資の締め切りも過ぎているようなので、本音で書いていきます。

理由①彼にしか利益がない

まずクラウドファンディングの他のプロジェクトと決定的に異なるのは、彼が性別適合手術を支援した後に社会的なメリットが特にないこと。社会へのリターンが0ではないにしろ小さすぎるんですね。0ではないというのはつまり、彼が無事に手術を終えて社会の中で元気に働き、周りの人に幸福を与える、という可能性を考慮したためです。

他の募集を見るとwebマガジンを再開させたい、とか今年で最後のスペースワールドで名物ショーを復活させたいとか、何かしらの社会的なリターンがあるものがほとんどなのです。

サイトでの募集のタイトルは【性同一性障害】自分は女性じゃない!心の奥にある、男性の身体に戻りたい!です。手術をしたその先で何をするかについては以下の通り

自身のありのままの身体に戻りたいです。

そして援助を下さった皆様に感謝を心を忘れる事無くこの先の人生を自信をもって、前向きに生きていきたいです。

【性同一性障害】自分は女性じゃない!心の奥にある、男性の身体に戻りたい! より引用

うん、まぁそれくらいはしていただかないと困るのですが、プロジェクトの目的が自分のことだけなんですよね。

僕は貧困は自己責任だなんてバカなことは言いません。お金がないのは時として社会構造の問題であり、ましてやそれを精神的な疾患を持つ人に対して「根性でどうにかせい」と叱責するつもりなど毛頭ないのです。

あなたを支援することによってあなたが直面する問題を乗り越えた後、社会にどんなメリットがあるか。クラウドファンディングサイトで「プロジェクト」として募集する以上はそれを説明する責任があり、自己完結ではいけないのです。

理由②社会的な影響

今後どうなるかはわかりませんが、彼が出てきたことによって他にも性別違和を持つ人たちがこのような”プロジェクト”を始めてしまうかもしれません。

最も集まったお金は1万4000円と、陰核の手術をするには程遠い額ですが、それでも彼の元にはほぼタダでそのお金が集まったわけです。※ちなみにお手紙とマグカップというリターンはあります。

たくさんの性別違和の人々がお涙頂戴のエピソードをまくしたて、本当の体に戻りたいんです!と切実に訴える。いやぁ、僕はそんな人々と同じだと思われたくはありません。そもそも僕は「元の体に戻る」という表現がむちゃくちゃ嫌いです。もともとそうでない姿に「戻る」とは言いませんからね。

僕がみんなにお勧めしている四巨頭会談というLGBT本の中でも、トランスジェンダーの方は同様のことを言っています。

か 手術した人が「男から女になった」 じゃなくて「女に戻った」っていう表現したりするじゃない?でも戻ったわけじゃないわよね。

能 うん、 戻ってないねー! 病気を盾にする人に限ってその言い方にこだわるんだ よ。 どっちでもいいのに!

かずあき; 竹内 佐千子; 西野 とおる; 能町 みね子. 四巨頭会談 (Kindle Locations 1792-1795). . Kindle Edition.

僕は共感するところがかなり多い本でした。「LGBTって何?」な人のお悩み解決から当事者の「うわーあるあるw」までをカバーするおすすめの一冊であります。

話がそれましたが要するに、性別違和・性同一性障害の人=手術費用を一般人に出してもらう乞食みたいな人ってシスジェンダーの人たちに思われたらたまんねーよってことです。

 

理由③美容整形手術と同じようなもんだから

これは賛否両論あると思うんですけど、結局性別適合手術って美容整形手術みたいなもんなんですよね。個人的にはそう思っています。

たとえば自分の性別違和から社会になじめないのと、自分の鼻が低いのがコンプレックスで人からどう思われているかを過剰に心配して社会にうまくなじめないのって、問題の本質としては同じなわけです。

だからそれを他人にお金貰ってやるのは違うんじゃないかなぁと。

ビューティーコロシアムって容姿の悩みを解決していく番組がありましたけど、あれはたぶん番組が美容整形手術やスタイリング代を出してますよね。あれは演料みたいなもんですよね。自分の元の姿と美しくなった姿を公共の電波に乗せて晒して、お茶の間を楽しませるというエンターテイメントが成立するからお金を出してもらえるっていう。ある意味社会還元が成立するということです。

いろいろ言いましたけれども

辛いことや理不尽なこともあると思います。僕もお金は多少苦労している方なので気持ちは分かります。治療にはとにかく金がかかる。ただ生きていくだけでも、社会の中にいる限りは金がかかります。

ほっしーも似たような記事を書いていましたね。

ちょっと就活しましたという話

彼もお金の面は心配しながらも絶対に院に行く!性別も変える!という強い意志の元、どうすればそれができるのか必死で考えて迷いながらも前に進もうとしているわけです。

世の中の人が応援したくなる人ってこういう人ですよね。

いろいろ言いましたが、今回お金を集めていた彼は僕と同じ年ですし、頑張ってほしいなという気持ちもあります。ただやり方は違うよねということ。何年かかるかわからないから、と言っていますが、何年かかってでもそれは自分で工面すべきお金なんです。命がかかっているわけでもないし、同情してくれる他人にすがって得るお金じゃない。

残りの費用を貯めるのも大変だと思いますが、頑張ってください。

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-FTM, Jan, トランスジェンダー, ホルモン注射, 性別適合手術, 性同一性障害